高齢者に相応しい医療(下)

中通病院友の会交流会記念講演 
中通総合病院 副院長 福田 光之
      
病気の原因の3要因
 病気の成り立ちをどう捉えれば良いかということですが、大きく分けて病気には三つの原因があります。即ち、「どんな親から生れたか」「どんな環境で生れて育ったか」「生活習慣がどうだったか」の三つです。
 しかし、高齢者の方々はこの三つとももう真面目に考える必要はありません。と言うのは、例えどんな親から生まれてきたとしても、皆さんの年まで生きられたんだからもう関係はないのです。命日や彼岸の日は丈夫な体に生んでくれた親に感謝すべきです。
 次に、どこで生まれたかですが、これも病気の発症に関連します。例えば、秋田で生れると沖縄で生まれるよりも約30%も胃がんで死亡する可能性が高いのです。だからといって今更関係ありません。三つ目の生活習慣についてですが、生活習慣の調整は小学生、中学生、若い働き盛りの年代のヒトにとってはとても重要です。しかし、ここまで生きてた皆さん方にとってはこれからの生活習慣なんて殆ど関係ありません。

 高齢者向きの健康の本にも、また、地域の保健師さん方も、寿命が短くなるから「タバコはやめましょう」「ストレスは少なく」「運動しましょう」「アルコールは適度に」「肥満は困る」「食生活は大事に」・・・と強調していますが、特に深刻な病気を持っておられない方は今更何も変える必要はありません。今まで過ごしてきた自分なりの生活のまま、淡々と生きることです。
 百歳以上の長寿者を対象にした研究がありますが、長命の原因を明らかにすることが出来なかったそうです。敢えて言うと長命の家系に生まれた事と、肥満体の長寿者はいなかったということくらいです。長生きしたければ痩せることです。その方がより長生きできます。肥れば、血圧が上がる、尿酸があがる、コレステロールも上がる、足腰も悪くなります。その結果、寝たきりになりやすいのです。

孤独は最大の敵
 皆さん方はもうそんなに長くないわけですから、インフルエンザや肺炎に罹って死ぬのは勿体ないことです。だからインフルエンザの予防接種は受ける方が良い。正月を迎える前に是非受けに来てください。もう一つは、鬱的にならない環境を作って欲しいと言うことです。人は精神的に元気がない状態では抵抗力も弱くなりますから、友達をたくさん作るべきです。ボランテア活動もいい、旅行も?友の会活動も、老人クラブの活動でも、何でも良いから外と接点を持ち、孤独にならない様にすべきです。要するに、寂しいということは生きていく上で大きなストレスなのです。孤独な人たちはそうでない人たちに比べて血圧は10-20mmHgほど高く、睡眠時間も一時間ぐらい短いと言われています。ですから、人と接しながら生きる、楽しむということが重要です。なついて来る孫たちが居れば呼び集めて手なずけるのもよし、嫁姑の問題でにらみあうのも無いよりは良いのです。

自分なりの死に方を考えて
 体の調子が悪いと感じたらまず受診してください。高齢者ほど早期発見、早期治療が大事です。病気を繰り返しながら何れは介護を受けなければならない状態、あるいは寝たきり状態を迎えますが、そうなったらもう限界ですから素直にそれなりの病院や施設に行きましょう。もし環境が整っているなら自宅で過ごすのが一番良いと思います。家族のもとで生活し、来るべき時が来たら静かにあの世に逝くのが良いのです。

 だから、今のうちに、丈夫なうちに自分なりの死に方を考えて家族に徹底しておいて下さい。自分の死に方を回りに表明しておく事です。特に遠くに嫁いだ娘には徹底しておくこと。遠くに嫁いだ娘は普段はろくに帰っても来ないのに、親の死に際に飛んできて「どうしてこの程度の治療しかしてくれないんですか」と騒ぐことが多く、みんなで決めた治療方針を変更せざるを得なくなります。だから、楽に死にたければ、家族みんなの話をまとめておくことです。そして「俺は沢山の管を付けらては死にたくない」と思ったら、家族とお主治医に意思をハッキリしておく。遺言を書くのも良いと思います。

上手な医者選びが老後の幸せにつながる
 年をとったらなるべく入院しない。病院に過度の幻想を持たない。自らかかりつけ医を持ってその世話になることです。医者の選び方が最後の幸せにつながります。間違うとこの世で地獄を味わってからあの世に逝くことになります。その上で、あの世も地獄に振り分けられたら、もう悲惨ですね。考えるだけでぞっとします。
(中通病院友の会交流会記念講演より)


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