哭晁卿衡
(ちょうけいこう を こくす)
@日本晁卿辞帝都、征帆一片遶蓬壺。
(日本の晁卿 帝都を辞し、征帆一片 蓬壺(ほうこ)を遶(めぐ)る。)
A明月不帰沈碧海、白雲愁色満蒼梧。
(明月 帰らず 碧海(へきかい)に沈み、白雲 愁色 蒼梧(そうご)に満つ。)
口語訳
@日本国の晁どのは唐の都長安を辞し去り、ひとひらの小さな舟は東海の蓬壺をぐるりとめぐった。
A明月のようなあなたは故郷に帰れずあおい海に沈み、白い雲は悲しみの色に染まり蒼梧の山に満ちている。
晁衡は阿倍仲麻呂の中国名です。
この詩は、李白が阿倍仲麻呂遭難の翌年(754)に、仲麻呂の生存を知らずに、その死を悼んで作ったものです。
阿倍仲麻呂は753年、遣唐使の藤原清河とともに、日本に帰国することになりました。しかし今の沖縄あたりで台風に遭い、安南(ベトナム)に漂着します。そこから再び長安に帰り、そのまま唐朝に仕え、故郷の土を踏むことなく770年に異郷長安で没しました。