規則正しい生活、食事等で、夏ばて予防 




夏ばてとは
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“夏ばて”は正式な病名ではありませんが、夏の暑さからくる体調不良はまとめて夏バテといわれています.その原因は高温多湿の日本の気候に対する身体の調節不良です。

夏バテの症状は多種多様です。全身がだるくなったり、食欲の低下をはじめとする消化器症状、体重減少、意欲や体力低下,頭痛,発熱,めまい・・・など、不定の症状が広範に出ます。

夏バテに含まれるものとして、水分摂取不足・発汗による脱水による症状、食欲減退による
栄養バランスのくずれ睡眠不足、寝冷えによる夏カゼ、オフイスでの冷房病などもあります。



予防法には規律ある生活、睡眠、運動、食事、水分補給、休息、ペースダウン

熱帯地方の住民では、いわゆる夏バテという言葉がないそうです。ということは、高温多湿といった日本の夏の気候が、夏バテの主な原因となっているのです。従って、夏バテの予防はいかにこの特有の暑さに体を慣らすかということになります。

私達の体には、自律神経やホルモンなどの作用を介して、環境の変化に適応して体を常に一定の状態に保つ仕組みがあるのですが、夏ばてはこの調節がうまくいかなくなってしまう状態です。

人間の皮膚は常に呼吸し、一緒に水分を汗として出し、体温調節をしていますが、多湿のために蒸発がうまくいかず、体温上昇が生じ、それで疲労になります。

かつての「夏ばて」は、高温多湿で熱帯夜が続き、寝不足気味になったうえに仕事で体力を消耗した時に起こったものです。最近は、冷房とか、糖分の多い冷えた清涼飲料水の飲みすぎ、運動不足など、夜型の生活など自ら夏ばての状態を作り出している場合も少なくありません。

冷房の普及により、短時間に環境が目まぐるしく変わるために、かえって外部環境に対する自己調節能が弱くなります。
夏は体の活動が一割ほど低下する季節です。日常生活全般にわたり無理をせず、ペースダウンを心がける。 



夏の食事で気を付ける点は何でしょうか。                 

偏りのない、規則正しい3回の食事は欠かせません。少量でもいろいろな種類を食べましょう。
食欲を刺激する香辛料(ショウガ、わさび、唐辛子、山椒、ハーブなど)を上手に使っておかずも摂るようにしましょう。油で調理したもの、香りの強い野菜も良い方法です。

高温多湿で胃腸の働きが弱まると、つい素麺などのサッパリとしたものだけで済ませがちですが、それだけでは蛋白質、ビタミンB群、ミネラルが不足し、体力消耗につながります。食後に果物や牛乳で補いましょう。
多量の糖分を含む清涼飲料水の摂りすぎは間食と同じで食欲不振の原因になります。水分補給は大事ですが、飲みすぎる時は温めのお茶をおすすめします。

胃に 負担がかからず消化のよいタンパク質(卵、肉、魚、牛乳な ど)、ビタミン(野菜や果物など)、ミネラル(牛乳や海草な ど)をバランスよく少しずつでも、いろいろな種類の食品を とりましょう。

食欲がなくて、肉や魚を食べる気がしない時は、豆腐でタンパク質をとるとよいでしょう。高タンパク質であっさりとした、消化の良いものの代表です.無理して土用のウナギを食べる必要はありません.



冷房病にならないために                         

クーラーによる冷やしすぎによる体の不調は「冷房病」という名前でも知られています。暑い戸外で汗だくになって歩いた後など、冷房の効いた部屋に入るのはとても気持ちの良いものですね。ですが、体は外気との温度差が5度以上になると自律神経のバランスをくずし、さまざまな障害をもたらすといわれています。24度C以下にはしないことも重要です。

冷房病の症状は様々で、神経痛、五十肩などの関節痛、腰痛、女性では生理不順にも影響することが知られています。また、急な温度変化は血管を縮める(収縮させる)作用もあり、心臓への負担が心配されます。狭心症や心筋梗塞の持病がある人は要注意です。

直接冷気に当たらないように工夫や、薄いカーデガンを着たり、膝掛けを使うなどして体を冷やさないようにします。冷えたなと感じたら軽い運動をしたり、家に帰ったらぬるめの風呂にゆっくり入り、かるく手足をマッサージして血のめぐりをよくしましょう。
夏ばての症状を認めていても、冷房の部屋にこもっていたのでは、いつまでも体が暑さに慣れず、かえって悪循環になります。特に寝ている間は体温調節ができませんので、冷房は消しましょう。冷房を効かせ過ぎず快適に過ごすには、扇風機を上手に使うことも一つの方法です。冷気を無駄なく循環させるだけでなく、扇風機自体が汗を吹き飛ばし体熱を下げる比較的自然な器具だからです。ただし、扇風機は直接身体に当てないで、空気をかき回す程度にしましょう。



夏を元気に通すための日常生活の工夫                   

生活にリズムを
生活のたて直しは、まず“睡眠”をきちんと確保することで す。就寝と起床時間をシッカリ守りましょう。朝の生活リズ ムをつくるには、ラジオ体操をするのが良い方法です。
夏は寝苦しくて 睡眠不足になったり、生活のリズムが乱れがちとなり、その 結果、体調をくずして夏バテを起こしてしまいます。

寝つきをよくする工夫

就寝中のクーラーのつけっぱなしは、夏かぜや下痢、体調不 良の原因になりますので禁物です。寝る前に寝室をクーラー で冷やしておくと気持ちよく休めます。
クーラーや扇風機をタイマーをかけて上手に温度をコントロールして寝やすい環境を作ることが必要です。
夏ばては不規則生活を強いられる夜勤勤務者におこりやすいと言われています。
厚手のカーテンをして部屋を暗くする、敷布やパジャマ類を綿製品にする氷枕を使ってみる工夫なども必要です。

お風呂はぬるめに
お風呂は、ぬるめにゆっくり入ると、自律神経を落ちつかせ 心身がリラックスします。

軽い運動
夏ばて予防に軽い運動が効果的です。一日中,日光に当たる等は逆効果です.


脱水による夏バテ                             

夏の暑さに適応するためには、うまく体温を調節する必要があります。体温の調節は皮フに流れる血液の量を調節し、皮フの温度を変化させておこないます。また環境温が30℃を超えると、皮フ血流量の調節だけでは体温を一定に保つことができず、汗によってからだの表面から熱を放散させます。人は発汗能が大きく、ほかの動物にくらべて体温を調節する能力が非常に大きいのです。

発汗による水分の喪失量は1時間に約2リットルにもおよぶことがあります。 この水分を十分補うことができない場合には脱水状態になり、いわゆる夏バテのいろいろな症状が見られます。脱水による1%の体重減少は体温を約0.3℃上昇させ、心拍数も1分あたり5〜10拍増加します。これら体温および心拍数の変化は体重の減少と関係しますので、水分を摂取すれば体重の減少は少なくなり、体温および心拍数の上昇がおさえられます。
水負債が4〜6%におよぶと血液の量、唾液や尿の量が減少し、血液が濃くなり、心拍数・呼吸数・体温が上昇し、ノドの渇きも著しくなります。5〜10%以上の水不足で、激しい疲労感が起こり、精神身体機能も低下し、熱射病により死亡することもあるので、水分を補給することが重要です。

体液のうちほぼ5%が血液のなかの水分で、そのイオン組成はほぼ0.9%の食塩水です。一方、汗には0.3〜0.5%の食塩がふくまれ、1リットルの汗をかくと3〜5グラムの食塩が失われます。この際、水だけを飲むと血液が希釈されて口渇感がなくなり、また余分の水分を尿から排泄します。従って発汗時の水分補給には汗から失われたイオンの補給が必要です。夏場には生活のなかで意識的に水分とイオンを補給するように心がけるべきです。



夏ばての症状の強い患者さんに対してはお医者さんはどのような治療をなさいますか?

基本的には疲労感・倦怠感は身体を休ませて欲しいとのサインですから、休息や睡眠、食生活等、先に挙げた項目を中心に生活指導を行います。

清涼飲料水ばかり飲んでいる人や、かなり暑い所で肉体労働をしている人たちにはビタミンB1が有効の場合があります。そのためにビタミン剤を投与することがあります.

漢方では清暑益気湯や補中益気湯などが処方されます。これらの漢方薬に含まれている薬用人参には体の不調を回復させ、胃腸の調子を改善させる作用があります。

夏ばてと思っていてもまれには本当の病気が隠れている場合もあります。症状が長く続いたり、体重減少が著しい時は一度医師の診断を受けてください。

                                                                                     (2002/7/10 ABS TVより一部放映)


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