健康アドバイス2002年4月24日(水)放送分
クリニカルパス


秋田県医師会常任理事:福田光之



Q1)まず、クリニカルパス、ですが、私は初めて聞いたのですが、どういうものなんでしょうか?
別名,クリティカルパス、とも言います。診療・治療の計画表のことで,入院から退院までの詳細なスケジュール表と考えればいいと思います。



Q2)具体的にはどういうものでしょうか?

入院から退院までの治療の流れをまとめて書いてある表です。いろいろな形式がありますが,横軸には入院から退院までの日にちが書いてあり,縦軸には患者さん方用とスタッフ用で異なりますが,いろいろな項目が記載されています.

 患者さん方用の場合の縦軸には「生活・活動」「食事」「清潔」「排泄」「薬」「傷の管理」「検査予定」「病状説明予定」・・・・など,まだまだ続きます.

 スタッフ用の場合の縦軸には「検査と評価」「関連部門との相談」「理学療法」「点滴」「投薬」「食事」「酸素投与」「検査予定」「病状説明予定」「清潔と傷の管理」「疼痛管理」・・・・などと続きます。



Q3)ずいぶん大変な表ですね.どうしてこういうものが作られるようになったのでしょうか?

これでも比較的簡単な症例のをサンプルとして持ってきたのです.

クリニカルパスが作られ始めたのはアメリカです.アメリカでは医療費は包括性といって各疾患ごとに一定に決められており,その中で検査,治療などが行われています.そのために濃厚すぎず,さりとて希薄すぎない医療のコースの設定が求められているのです。そういう背景で発展してきています.

日本では、90年代中頃から関心が高まってきました.アメリカと異なり医療費は出来高払いと言って各患者さんに行われた医療ごとに医療費は異なっているのです。日本では医療の「質の向上」,「均質化」,「入院日数短縮」などを目的にクリニカルパスが注目されてきました.ただ、日本でも最近は医療が徐々に「包括性」になりつつありますのでその意味でも注目され始めています.



Q4)患者さんにとってはどうのようなメリットがあるのでしょうか?

診療,検査,手術など経過の理解がし易くなります。
入院時から退院までの予定が立ちます.退院後の予定も立てられます.
クリニカルパスと言う共通の資料を持っているので,これを媒介にスタッフとのコミュニケーションとりやすくなります。

患者さんもいろいろ意見・要望を述べたり出来るようになり,診療に主体的に参加できる様になります。
退院までの日数が短くなります。



Q5)病院にとってのメリットはどうでしょうか?

クリニカルパスを間にしての対話,インフォームドコンセントが豊かになります.
患者さんや家族の方々への教育にも有用。
その患者さんに関する医療行為の開示にもなります。
患者さんが全行程を知っていることから,判断能力も高まり,医療事故防止にもつながる。



Q6)秋田県ではどのくらいの病院が導入しているのでしょうか。

秋田県でも数年前からクリニカルパス研究会などが開催されています.当時はまだ2-3箇所くらいの病院しか導入していなかったと思いますが,先に述べたように患者さん方にも,病院側にとってもメリットが大きいので,今ではクリニカルパス導入に消極的,あるいは距離を置いている病院はほとんど無いと考えられます.それだけに実態の把握は困難で,私どもは数値としてはつかんでおりません。

クリニカルパス作成はそう簡単ではありません.一つにはその医療機関の医療の質の設定という大きな問題が絡んでいること,医療には20数種類もの職種のスタッフが関係していますので,互いの立場の情報交換を欠いては作れません.調整しながら作成する必要があるのですが,これが実に大変なわけです.

また,一度作成すればそれで良いというわけではなく,定期的に内容を再検討してクリニカルパス自体を改良しながら成長させなければなりません。

以上のような難しい問題もありますので,普及にはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、やがて一般的になる時代は必ずくると考えられます.




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