家庭血圧計と体脂肪計について


常任理事 福田光之      2001/2/28NHK放送分


〔問1〕家庭血圧計で毎日血圧を測定していますが、計る度に数値が異なります。どうしてでしょうか。家庭での血圧測定の仕方について教えて下さい。

〔答1〕これまで診察室で測定される随時血圧を基準にして判断してきました。しかし、血圧は常に変動しており、測定時間などの条件によって大きく影響を受けるため、随時血圧だけでは血圧の評価は不十分であることが解ってきました。
また、医師の前やなどでは緊張して血圧が上昇する方もいて、これを「白衣高 血圧症」と呼びます。このような影響を除去するため、家庭血圧を診療に役立て るようになってきております。
 確かに、続けて何回か測定した場合、測定するたびに血圧値が変動し、どの値 をその場合の血圧とみなせばよいか判断に困ることがあります。一般的に2-3回 続けて測定すると徐々に安定してくるので、その時の値をその時の血圧とみなせ ば良いのです。  おそらく測定するたびに緊張がとれて計る度に通常の値に落ち着いていくのだと思われます。
〔問2〕家庭血圧計ではいろいろな種類のがあるとされていますが、どの様なものを購入すればいいのでしょうか。
〔答2〕 家庭血圧計には上腕で測定するタイプのほか、手首や指先で測定するタイプが あります。上腕で測定するタイプは精度がよく、ほぼ正確に血圧を測定すること ができますが、ほかのタイプは便利なんですが誤差が大きく、あまりお勧めでき ません。これから購入される場合は是非、上腕で測定するタイプを選んで下さ い。
〔問3〕家庭での血圧測定の仕方について教えて下さい。
〔答3〕 第一に血圧計を正しく用いて計ることですが、血圧計のメーカーによって腕へ の巻き方などに若干の違いがあります。そのために使用説明書を良く読むことで す。  上腕で計る場合には腕帯を関節にかからないように巻きます。緩すぎてもきつ すぎてもいけません。間に指が1本くらいが入る程度がちょうど良いのです。
 第二に、家庭血圧の測定の目的は、一番自然な環境での値を知ることにあるの です。だから、何回でも良いのですが、自分にとってリラックス出来る都合がい い時間帯に毎日計ることで、結果は必ず記録しておいて下さい。よく身体の調子 が悪いときだけ計る方がいらっしゃいますが、こういうときは大抵は高く出ます ので、血圧が高いから具合が悪いと思い込んで不安になり、ますます高くなりま す。血圧は多少変動しても症状は出さないのですが、逆に体調が悪いと上昇する のです。  たとえて言えば、足の爪をはがして痛みがあるときにはそのストレスで血圧は 上がりますが、血圧が高くなっても足の爪がはがれることはないのです。この様 に考えてみては如何でしょうか。
 第三に血圧は変動するのが当たり前ですので結果をあまり気にしないことで す。何かの機会にまとめて医師や保健婦に見せて判断してもらって下さい。その 時自分で説明するのでなく、記録した測定結果を見せて下さい。    第四には、これは重要なことですが、測定結果でお薬の服用を勝手に調整して はいけません。
〔問4〕体脂肪計を購入しましたが、体重は変わらないのに計る度に数値が一定 しません。体脂肪計は役に立つのでしょうか。
〔答4〕今は健康に対する関心が高くなっている時代で、かつ肥満傾向の方が増え てきていますので、体脂肪計に何かと関心が高いようです。両手に握って測定す るタイプ、体重計とセットになったタイプなど、ここ2-3年すごく売れていると のことでした。  体脂肪測定は身体の水分とか、着衣、皮膚の湿り具合などの影響を受けます し、器具によっても差が大きいのです。一定の器具で一定の条件で測定すれば健 康管理にある程度は役に立つでしょう。
〔問5〕こんな簡単な機械でどうして脂肪量が解るのでしょうか。
〔答5〕 はっきり言いますと体の脂肪を直接計る道具なんて無いのです。お腹のCT検査 が健康によくない内蔵脂肪症の判断に役には立つとされていますが、気楽には計 れません。  体脂肪計は原理的に数種類ありますが、一番普及しているのはインピーダンス 法というもので身体に微弱な電流を流して、電気の抵抗を計って脂肪量を推定す るわけです.脂肪は電気を通しませんので増えれば抵抗が増すわけです.
〔問6〕体脂肪計の使い方についてまとめて下さい。
〔答6〕 第一に電気抵抗を計っているので脂肪量を計っているのではないことを納得し て使うと言うことです。測定値は身体の水分量、着ているもの、等の影響を受け やすいので、もし測定するなら、一定の条件下で、例えばお風呂上がりなどに計 るとか、の工夫が必要です。
 第二に良い条件で計ればある程度脂肪量が反映されているとしても、危険な肥 満と言われるお腹に脂肪が貯まるタイプなどを区別できないので、真の意味で健 康管理の道具としては力不足です。ただし、肥満を意識して運動等を心がけた方 では体重が変わらなくても体脂肪率の減少がみられ、総コレステロール、中性脂 肪の低下などが観察されていますので、努力の効果判定の指標にはなるかもしれ ません。
 最期にインピーダンス法による体脂肪率測定は、身体に微弱な電流を流します ので心臓病でペースメーカーを入れている方には要注意です。具体的な事故例は ないようですが健康管理上絶対に必要な測定でないのでやめる方がいいでしょ う。

コメント  患者さんは数値で表される検査結果にあまりにも神経質に惑わされている傾向 があります。医師は全体の流れを重視しますのでその時々の値はそれほどとらわ れることはないのです。  本日お話しした血圧や体脂肪についても測定した値に一喜一憂するのは全く無 駄なことです。優・良・可・不可程度に分けて考えて良いと思いますし、自己判 断はしないで医師や保健婦に相談されればいいでしょう。