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医師不足問題

TOPIX

  1. 日本医師会『グランドデザイン2007--総論』の医師対策部分は疑問 (2007.4.26)

  2. 絶対的不足と偏在のダブルパンチ  日医に方向転換を望む (2007.4.27)

  3. 深刻化がもたらした、男鹿市の不可解な医師契約問題 (2007.6.6)

  4. 安倍首相のコメントの意義は大きい (2007.6.7)

  5. 政府・与党が緊急医師確保対策 参院選にらみの空論 (2007.6.19)

  6.公的医療機関の医師の責務は? (2007.6.20)

  7.秋田県の医師確保対策の進捗状況、成果は?(2007.6.21)

8.「医学部定員削減」の閣議決定が見直されるか?(2007.6.27)

9.秋田県の医師確保対策(2) 修学資金貸与には応募者多数 (2007.6.29)

10.秋田県の医師確保対策(3) 後期研修に視点を移せ (2007.7.3)

  11.国レベルの「臨時医師派遣システム」 その後(2007.7.11)

医師不足__臨床研修と今後の医師養成  秋田医報1279号(2007.6.1)に掲載
 


1.
日本医師会『グランドデザイン2007--総論』の医師対策部分は疑問


 最近、日本医師会の動きがあわただしい。市民公開講座、日医総研セミナー、シンポジウム・・など次々に開かれている。来月も数件の企画が予定され、県医師会に動員要請がきている。

  今月、日医は日本のあるべき医療の姿を記述した『グランドデザイン2007---国民が安心できる最善の医療を目指して---総論』を公表した。その中で多くの視点からあるべき姿が論じられている。おおむね納得できる内容であるが、医師不足対策の部分の扱いは小さく、更に論旨に納得できないものがある。

  今、社会問題になっている、多くの地域の医師不足と、特定の診療科における医師の不足の原因は、医療費抑制の立場のみから医師養成を抑制してきた結果であることは、地域の医療をあずかる医師の立場から見て明確である。しかし、一般的には医師の絶対的不足ではなく、偏在が問題なのだ、と捉えられている。日医も従来からそのような見解を採ってきた。
  
日医はその前に、昨年10月、「医師確保に関する見解」を公表した。その中で、医師偏在・不足の原因を、「国による永年にわたる医療費抑制政策の結果」と断じたことは当然のことで評価できる。しかしその中で医師が絶対的に不足しているから養成数を増やすべき、とは述べていない。

 一方、日医は『グランドデザイン2007- ---総論』の中で一項目として国際的視野から見たわが国の医師確保の問題についても論じている。まず、我が国の医師数をOECD加盟国のそれと比較し、OECD加盟国の医師数の平均は310人/10万人で、日本は200/10万人であり、日本の医師数は経済力に比してかなり少ないと評価している。ここまでは良い。

 問題は、そう言いつつも、医療費を据え置いたまま医師数を増やす施策は、医療の質を確保するという観点からも行うべきではなく、総医療費支出の増加が前提である、と論じている。この部分には矛盾がある。

 医師数をOECD諸国と比較し、不足しているという判断は十分納得できる見解であるが、医師養成の増加策は総医療費の増加を見てからという見解は、医療現場の医師不足の深刻さをくみとった考え方とは言えないばかりでなく、医療の質を確保する観点から行うべきでないと美しい言葉を並べてはいるが、裏を返せば、既得権、特に医師の収入確保に固執している、とも取られかねない。私にはそう感じられる。

 だから、日医の医師対策は私にはにわかには賛同出来がたい考え方である。
 大体、医療費抑制策を前面に出しているわが国が、簡単に方向転換するとは考え難いし、例え変換したとしてもレベルの問題がある。10%近くも総医療費を増やす状況を得てから医師増加策の実行を迫ると言うのだろうか。医師の養成には最低10年は必要である。医療現場はもう待てない、そんな余裕はない、のだ。『グランドデザイン2007---国民が安心できる最善の医療を目指して-』の副題にある「最善の医療を確保する」には医師の絶対数の増加が必要である。まず、日医が方向転換すべきである。その際、既得権の擁護に固執するようでは、社会の誰も支持しない。ますます孤立するだけである。

     

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2.絶対的不足と偏在のダブルパンチ  日医に方向転換を望む


 医師不足を論じる際の客観的指標としてOECD加盟諸国間の医師数の比較は有用である。OECD加盟国の医師数の平均は310人/10万人で、日本は200/10万人である。この医師数の違いは各国毎の独特の医療事情を勘案してもわが国の医師数は明らかに少ない、と判断出来る。

 目を国内に転じた場合、平成9年に閣議で医師数が将来過剰になると言う予測をもとに、引き続き医学部定員の削減に取り組む、との決定がなされた。この場合、何をもって医師過剰になるとの予測をしたのかが問題であり、その後医師問題が次第に明らかになりつつあったのに、10年以上も再検討されてこなかったことは重大である。

 医師が決定的に不足していた昭和45年頃には、わが国に必要な医師数を150人/10万人と設定し、いわゆる「一県一医科大学」構想を推進し医師の充足につとめた。医師の数的充足が喫緊の目標であった当時は、徐々に医師数が充足して来たという実感はあったが、ここ10年近くは人口10万人あたりの医師数が170人、180人と増えつつあったのに、医療の現場では医師不足感が払拭しきれなかった。最近、医師数が200人/10万人にも達したが医師不足問題は一層顕著になってきた。
 これは、時代と共に、医療の質が変わり、医師・患者関係も変わり、医療制度が変わっただけでなく、女性医師の増加、医師の個人的なライフスタイルが多様化していく時代を迎えた事の関連している。その変化を評価分析することなく単純に医師数だけで医療供給のレベルを論じようとした、時代錯誤的な判断基準がもたらした結果である。机に向かって、図表を見ている連中に真の医療の姿が分かるはずはない。

 問題になっている医師不足、地域偏在、特定診療科医師の偏在・不足といっても各都道府県によって事情は大きく異なっており、さらに各都道府県内においては二次医療圏毎に大きなバラつきの問題を抱えている。即ち、多くの道県では道庁・県庁所在地では、医師は数の上では足りているものの、勤務医不足、特定診療科医師の偏在・不足が深刻となっており、郡市では医師の絶対的不足が相変わらず未解決である。

  我が国の医師不足を解決するには、何はさておき医師の絶対数の増加が必要である。日医は過去を精算し、早急に方向転換すべきなのだ。

  
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3.深刻化がもたらした、男鹿市の不可解な医師契約問題

 地方の医師不足の深刻化はただ事ではないが、秋田県男鹿市で不可解な非常勤医師との契約問題が発生した。
 当該の医師は防衛大卒の若い女医。まだ自衛官としての義務年限が残っていたこと、報酬が月6回の勤務で100万円と異常に高額である点、副市長が独断で契約をしたこと、コンサルタント料や成功報酬が高額で、契約内容を他に漏らさないと記載されているという点も実に不可解である。

 もっとも理解できない部分は当該の女医が自身の身分や義務年限をどう理解していたのか?と言うことである。本人さえしっかりしていれば今回のことは起こり得なかった。知っていたのなら悪質であるが、知らなかったはずはないと思う。女医自体はとてもいい人だったと言う評価も伝わってくるのも、やはり不可解である。

 副市長の行動にも不可解な点が無いわけではない。責任を取って辞表を提出し受理されたというが、彼も被害者の一人である。これで医師確保が出来そうだという、ただそれだけで突っ走り、契約内容を適正に判断出来なかったのだろう。ただ、独断で進めた事は許されない。女医に支払われた給与は新聞によると院長が自前で支払ったとされるが、これは返還されたらしい。ただ700万円近くの契約料の返還交渉はまだ宙に浮いているらしい。契約内容は分からないが、内容によっては始めから成り立たない契約でなかったのだろうか。

 貴重な税金が不当に支出されようとしている現実を突きつけられた男鹿市民にとっても衝撃だったと思う。
 同じ県で、このような厳しい医師不足が生じているのに実際には何ともしてあげられないのに忸怩たる思いがする。次回の秋田県との医療行政懇談会では私から秋田県の医師不足対策について話題を提供する予定となっている。何か前向きな結果を引き出したいものである。

  
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4.安倍首相のコメントの意義は大きい

 安倍首相は2007年5月31日の医師確保対策に関する政府・与党協議会で「国民が地域の医療が確かに改善されたと実感し、もう大丈夫だと安心してもらえるよう全力で取り組む」と決意を表明したと報道された(メディファックス5175号)。

 首相が医師の絶対数不足を認めたのか、医師の偏在の解消のために手を打つのか、真の意味はくみ取れないが、この双方に手を付けることなくして地域医療問題の解決はあり得ないから、大きな意義のある発言である。
 ここ数ヶ月は与野党双方において医師不足問題、地域の医療崩壊問題が取り上げられている。これは参議院選挙をにらんでの作戦の一つでもあろう。今まで医療福祉問題を論じても票にはならないと各政党とも無視し続けてきたのに、豹変である。安易に政争の具に使って欲しくはないが話題の提供、コンセンサスの形成のためにはとても良いことだ。

 我が国の医師の養成計画は平成9年に閣議で「医師数が将来過剰になる」と言う予測をもとに「引き続き医学部定員の削減に取り組む」、との決定がなされた。この閣議決定というのは政治的に見ればかなり大きな意味を持つものらしく、未だに国の基本路線となっている。この場合、何をもって医師過剰になるとの予測をしたのかが問題である。単に医師数だけを問題にしている所に大きな誤りがあった。地域医療の崩壊を目の当たりにして10県に10年間に限定して医学部の定員を10人増やすことを決定したことは小さな意義があるが、国は未だに医師数が不足だとは認めていないし、どこでも述べていない。まず、国は医師数の絶対的不足を認めるべきである。そうすべき根拠はいくつでも挙げられる。

 この地方の医師不足は平成16年から義務付けられた新臨床研修制度が契機となって拍車がかかった事は明らかである。しかし、研修制度が悪いのではない。研修という面では大きな進展である。ただ、研修医数より研修受け入れ数が多いこと、給与が各研修病院で大幅に異なるという2点、はこの制度の最大の問題点である。卒業生の数より受入数が多いと言うことは研修医が研修先を自由に選ぶ事が出来ると言う事であり、医師の偏在の因になることは自明の理であった。

 医師の偏在を問題視するなら、この点の解消なくして偏在の是正はあり得ない。 僻地への赴任を義務化しようと、センター病院に医師を集めてそこから地域に医師を派遣しようとしても、最初の段階で偏在を許容しているようでは良い結果は絶対に出てこない。

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5.政府・与党が緊急医師確保対策 参院選にらみの空論

 医師確保対策に関する政府・与党協議会は5月31日、医師の臨時派遣システムの構築を柱にした「緊急医師確保対策」を決定したと報じられた。

 緊急対策は、●国レベルの「臨時医師派遣システム」の構築●勤務医の過重労働の解消●女性医師らの職場環境の整備●臨床研修病院の定員見直し●医療リスクに対する支援●医師不足地域に勤務する医師の養成の短・中長期的に取り組む、の6項目。

 ここに至ってやっと?それが、実感である。何で今なのか?それはやはり地域医療の崩壊が医療従事者の悲痛な叫びのレベルから、社会問題として目に見えるレベルに達したから、と言うこともある。しかし、参議院選挙をにらんでの緊急つじつま合わせ対策作成という性格が強い。
 大体、国、厚労省は医療をここまで崩壊させたという責任をどう感じているのか?どこにも、何も表現されたことはない。

 これらのプランの内で最優先で取り組むのは「臨時医師派遣システム」の構築で、医療スタッフが充足している都市部の公的病院などの医師を、不足地域に一定期間派遣する制度なのだ、という。その供給源医療機関として、国立病院機構、日赤、済生会などの公的病院のほか、民間病院などにも協力を求めるとのことで、協力した病院に対する支援策も検討する、と言うものである。

 しかし、「臨時医師派遣システム」は医療現場の現実を知らない、政治家、官僚共の机上のプランで、実効性は皆無と思う。

 徴兵制度がある時代ならいざ知らず、これらの医療機関に勤務する医師が国の命令、院長の指示を素直に受けて地方に長期間行くだろうか?期間はどれくらいを想定しているのか?その間は単身赴任か?一週間程度なら学会出張的な感覚で行くこともあり得るだろう。
 第一、そのような医療機関に勤務する医師が地域医療をどれほど担えるのか、多分役立たないだろう。迷惑だよ。地域医療をバカにしてはいけない。医師免許を持っていれば誰でも出来るというわけではない。地域医療の基本は土着の医師によって長期的視点で行われる必要がある。
 長期赴任なんてあり得ないことだろうが、もしそうなら派遣先に魅力がないと難しい。そんな魅力がある地域、医療機関なら医師不足。医療崩壊なんて生じないのだ。

 医師への協力要請では絶対成り立たない計画である。実際に派遣医師が出るとすれば、若手医師全員に断られた各病院の院長が板挟みにあって、仕方なく、トボトボと行くかも知れない。こんなのに来られたら迷惑だ。

 実効性ゼロの机上プラン、徴兵制度ならぬ徴医制度でも作る気なのか、国は・・・と言う印象である。

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6.公的医療機関の医師の責務は?
 

 全国に146カ所ある国立病院機構は、地方への医師派遣源として想定されているが、実効性は疑問である。昨秋、医師不足が深刻な地方の国立病院に東京などから医師を派遣する制度を導入したが、医師達の反対にあって僅か半年で中止している。国立病院間での異動、マンパワーの共有さえも困難な状況にあるのに、崩壊しかかった地域の医療機関に医師を派遣できるのか。他の職種なら転勤を拒否できないのだろうが、この点、医師は甘やかされていないだろうか?

 済生会系の医療機関の医師充足状況について私は知らない。
 日赤病院も全体的に見て医師不足状態にあるとされる。地方の日赤病院はブランドもあって比較的医師は充足しているとされるが、都市圏の日赤はどちらかというと医師不足状況にあるという。

 日本の医療機関の設立母体は様々であり、各々それなりの目的を持って運営されているはずである。要するに、国公立、公的の医療機関は本来果たすべき公的責務があって、そこに勤務する医師は長の命に従って責務を果たすのは当然である。例えば、国立病院機構の医師は国策医療の推進にあたっては業務命令にしたがう義務を負い、拒否することは認められない、と思う。確認したわけではないが、この辺は就業規則に多分明記されているはずである。だから、これに納得する医師のみを念書を取って採用すればいい。しかし、ここを明確にしたら医師確保が出来ず国立病院の医療自体が先に崩壊するだろう。この辺うやむやにされていないのだろうか。本来、公的病院の医師になるにはそれなりの覚悟が必要なのだ。

 秋田県の県立、自治体立病院の医師は知事や首長の業務命令にしたがう義務を負っていると思うのだが、各医師はそれを自覚して勤務しているのだろうか?もし納得済みで就業しているとすれば、地方の医師不足対策や新型インフルエンザの感染拡大、種々の健康危機管理の場面などで、医療の前線に立つ医師の確保・動員はとても簡単になるのだが・・。

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7.秋田県の医師確保対策の進捗状況、成果は?? 

秋田県では医師看護師が不足し、秋田市以外の地区、特に県北、県南地区の医療は崩壊し危機的状況にある。
 去る5月27日、秋田市内で市民団体が主催する「医師・看護師を確保して地域医療を守る県民集会」が開かれ、約1000人が集会に結集し、その成果はマスコミ等を通じて各地に発信された。県民自らが立場の違いを超えて地域医療を守るために県民集会を行ったのは全国でも初めてある。国や県の対策に任せていてはいのち、健康を守っていけないという、住民・医療従事者の悲痛な叫びが背景にある。

 では、秋田県の医師確保対策はどの様になっているのだろうか。
 県では必要な医師数を確保し、医療水準の維持、向上を図るために医師確保総合対策を展開している。その内容は19年度の健康福祉部の事業計画によると以下の七つの事業である(項目の順序は私が入れ替え、説明を簡略化した)。

(1)地域医療従事医師修学資金等貸与事業
 県内の公的医療機関等に医師として勤務しようとする医学生、大学院生及び研修医に対し、修学・研修資金を貸与する。
(2)県職員採用医師派遣事業
 医師を県職員として採用し、公立病院等に派遣する。採用は4年間、うち3年間は病院勤務、1年間は有給研修期間とする。
(3)臨床研修対策支援事業
 研修医の誘導・定着を図るための臨床研修体制の充実強化事業で、合同説明会の開催、指導医講習会の開催、研修医対象の講習会の開催など。
(4)産科医療体制特別対策事集            
 本県の実情に即した産科・小児科医療提供体制を確立するための事業で、助産師の資質向上、産科・小児科医療を考えるフォーラム、女性医師に関するセミナー・再就職研修会など。
(5)夢実現・ドクターセミナー開催事業
 将来医師を目指す高校生を対象に、病院1日体験を開催する。
(6)医師登録紹介・広報事業
 県内の医療機関での勤務を希望する医師に対し、就職先を斡旋・紹介する。
(7)医師リクルート強化緊急事業
 医局員が比較的潤沢で地域医療に積極的に取り組んでいる医科大学等を訪問し、医師派遣を直接依穎する。 

 これら事業の内、対象医師がいれば(2)(6)(7)は即効性が期待できるが、現実はどうなっているのだろうか。(1)は長期的視点が必要だし、(3)(4)(5)は効果の評価が困難な項目である。
 まだ事業は発足して間もないが、実効はどれだけあったのか、感触としてどう評価しているのか、7月上旬に開催される秋田県と県医師会との医療行政懇談会で私から質問と話題を提供し、次のステップの対策について一緒に協議したいと考えている。

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8.「医学部定員削減」の閣議決定が見直されるか?

医師不足が深刻化し地方の医療が崩壊していく中、毎日新聞が行った政党に対するアンケートに対し、代表的5党が「医学部定員の削減に取り組む」とした1997年の閣議決定について、「見直すべき」と回答したことが報道された。
 医師数についての認識は「絶対数が不足している」としたのは
民主、共産、社民党で、
●民主は「OECD(経済協力開発機構)加盟国平均にするには10万人も不足」
●共産が「医師過剰地域はない」
●社民も「このままではOECD最下位になる」としている。

一方、
●自民は「一定の地方や診療科で不足が顕在化」
●公明も「へき地で医師が不足し、小児科、産科の医師不足は深刻化」
と、部分的に不足がみられるとの姿勢を示した。

 1997年の閣議決定について問うた項目に対して、自民以外の5党が「見直すべきだ」としたと言う。
その理由としては、
●医師不足の実態に即して医学部定員を元に戻す(民主)
●地域医療に従事する医師数を増やし、医療の高度化や集約化に対応する(公明)
●地方に住む人々に安心した医療を提供する(国民新党)
●勤務医の過酷な勤務の改善のため医師数の検討が必要(自民)としており、見直し自体は否定していない。

 詳細は知ることは出来ないが、この短い報道文章からだけでも各党の認識に大きな差があるが、参議院選挙がらみの時期でもあり、どれだけ深く検討した回答なのか知るよしはない。しかしながら、各党がこの様な見解を表現したことで医師数抑制を続けてきた国の医療政策が転換に向かう可能性が少しずつ出てきた。

 我が国の医師数の変遷を見ると、国は医師不足を解決するため1973年から「1県1医大」を推進し、秋田大学はその新設医学部の第一号であった。1983年に「人口10万人当たり医師150人」の目標は達成した。しかし、厚生省の検討会が1984年に「2025年には医師が10%程度過剰になる」との推計値を公表し、医学部の入学定員を削減するよう協力を求め、1997年には定員削減の継続を閣議決定し、現在も我が国の医師政策、医療政策の基本となっている。
 しかし、医療の高度化や人口の高齢化で、OECD加盟国の多くは医師数を増やし、2004年の加盟国平均は10万人あたり310人であるのに日本は200人で、加盟国中最低レベルである。各国毎に医療事情が異なることを勘案してもこの差はとてつもなく大きい。

 大体、医師不足を医師の頭数だけで論じること自体に誤りがあるのだ。あえて頭数で論じるならば日本の医師は10万人あたり310人になっても決して過剰にはならない、と私は思う。
 これだけ少ない医師で、総合的に見て世界最高の医療を提供し続けてきた背景には医療関係者の犠牲的な慢性的過剰労働があった。それの適正な評価と対策してこなかった事が現在の医療崩壊の原因になっている。今の若者気質では自己犠牲を強制されるが如くの旧態依然とした労働環境に対応できない。医療崩壊は当然の結果と言いうる。
 国も、厚労省も各政党も日本医師会も、物言わぬ各医師も、医療の崩壊の進行に荷担してきたと言う認識を示し、反省し、総括した上で新たな見解を出すべきである。国民も未だに医師に自己犠牲を求めている。こういう気風、文化も変えていかねば医療崩壊は更に進んでいく。


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9.秋田県の医師確保対策(2) 修学資金貸与には応募者多数

秋田県では医師・看護師が不足し、秋田市以外の地区、特に県北、県南地区の医療は崩壊し危機的状況にある。地域医療の維持、確保は県、自治体の仕事である。秋田県では必要な医師数を確保するために昨年度から医師確保総合対策を展開している。

 その骨子は、
●県出身者の医師志望者数を増やす、
●修学資金貸与による県内定着、
●県職員医師採用枠の拡大、
●医師のリクルート関連事業

などであるが、どれが実質的にスタートし、どの項目がどれだけの成果を上げているのだろうか知りたいものである。来月初旬の医療行政懇談会に向けて県医師会からこの点を質問内容として挙げたので、その席で全体像の報告があると思われる。

 機会良く、今朝の秋田さきがけ新聞に修学資金貸与事業の結果の報道があった。それによると、本年度の修学資金への申し込みは定員の3倍あり、県医務薬事課は医師確保対策に弾みが付いたとし、定員を緊急的に更に拡大できないか検討している、とのことである。県によると、募集定員5人に対し昨年度は応募が定員と同数の5人、本年度は15人が応募した、と言う。その理由として県は昨年度の募集は新入生だけに限定していたが、今年度からは各学年に門戸を広げた事が大きい、としている。これは予想していた以上の喜ばしい結果である。

 貸与額は月15万円で、貸与期間の1.5倍の期間、県が指定する「公的医療機関等」に勤務すると返済が免除される。貸与を受けた医師が卒業後に勤務する病院は、県や秋田大、県医師会、公的病院などで組織する「医師配置調整委員会」(仮称)で決めるとのことであるが、その際、勤務出来る病院として私的医療機関の一部も対象になったと聞いてはいるが、未だ私は文書では確認していない。その真偽も医療行政懇談会で確認したい。
 新臨床研修制度で研修医を受け入れている私的医療機関にとってこの問題は白黒をはっきりさせなければならない重要事項だからである。

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10.秋田県の医師確保対策(3) 後期研修に視点を移せ 

 秋田県では医師が不足し、秋田市以外の地区の医療は崩壊し危機的状況にある。地域医療の維持は県、自治体の仕事である。県では必要な医師数を確保するために昨年度から7項目からなる医師確保総合対策を展開している。先日の新聞報道に修学資金貸与事業の結果の報道があった。修学資金に関して本年度は定員の3倍の15人が応募し、県では修学資金貸与枠の定員増も検討しているという。これは予想以上の結果で喜ばしいニュースである。

 新臨床研修制度が発足してまもなく、我が国の地域医療が一気に崩壊に向かった。これは都市部への研修医の集中傾向もあるが、一番顕著なのは研修医の大学離れだった。事実、秋田県の場合、県内で研修している研修医数は制度発足以来、毎年60-70名と決して減少したわけではない。ただ、地域の中核病院に研修医が集まったのであって、それまで県内の新卒医師の半数ほどの研修を担っていた秋田大学が数名程度に著減した。このことで大学から地域の中小病院への医師派遣が出来なくなったばかりでなく、地域の医師の引き上げを行ったために秋田の医療事情は一変した。

 秋田県の医師確保についてはまだまだ予断を許さない厳しい状況にあるが、秋田県の医療の再構築という点では視点をいわゆる後期研修に移さなければならない重要な時期を迎えている。
 その視点では、
●秋田大学の専門医育成の機能を生かして行くのか
●地域中核病院で臨床中心の立場から専門医を育て、地域医療を再構築していくのか

の方法は二大別されるが共に一長一短がある。私は前者により期待している。

 3年目以降のいわゆる後期研修の主役は勿論研修を受ける本人達である。昨春は県内で研修を終えた68人中、55人(80%)が県内の医療機関に残った。うち3年目以降の研修先として秋大医学部付属病院を選んだのは28人であった。これに対し、2期生は61人が研修を終了し、県内に残ったのは41人(67%)で、秋大医学部は僅か20人と人数も、定着率も後退した。

 秋田県の医療の再構築を図るにあたり、まず初期研修医が一人でも多く院内の研修病院を選んで欲しい。この面はかなりの実績を上げていると評価すべきだろう。次の問題点は、臨床研修病院の研修責任者の多くは、秋田大学と良い関係を保ちながら後期研修医を自院、または県内に定着させようと考えていると思うが、県内最大で最も先進的な医療機関である秋田大学附属病院で3年目以降の研鑽を積もうという若手医師がなかなか出てこないこと、ここに無視でき得ない大きな問題があるのだと思う。

 秋田県の初期研修は比較的うまく運用されていると評価出来るが、いわゆる後期研修についての姿が見えてこない。行政,大学、医師会、病院会に研修医と指導医も加えた協議会を立ち上げ、秋田県版後期研修プログラムを早急に構築すべきだろう。


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 11.国レベルの「臨時医師派遣システム」その後

 国は5月末日、医師不足対策に6項目、即ち、●緊急臨時医師派遣システム●勤務医の労働環境改善●女性医師対策●研修医の都市集中是正●医療リスク支援体制●不足地域や不足診療科の医師養成、を決定した。

 その内で、最優先に取り組むのは「臨時医師派遣システム」の構築とした。医療スタッフが充足している都市部の公的病院などの医師を、不足地域に一定期間派遣すると言う制度である。
 私はこの「臨時医師派遣システム」は政治家、官僚共の机上のプランで、実効性は皆無と思う、と当初思ったが、厚生労働省は6月26日に、制度の初めてのケースとして、1道4県の6病院に計7人の医師を送り出すことを明らかにした。派遣先は北海道、岩手、栃木、和歌山、大分県の病院で、岩手県だけは県立大船渡病院(循環器科)1人、岩手県立宮古病院(循環器科)2人の計3人と派遣医が多い。

 岩手県は私の出身地であり,しかも、県立宮古病院には2年間勤務したこともある。大船渡病院は同じ三陸にある病院として数回診療応援にも行ったことがある。だから、今回の医師派遣のニュースは特に目が惹かれた。岩手県は県立病院網が医療の大部分を担っており、かつては32ヶ所もあり、最近合理化で合併などで数は少なくなったと言うがそれでもまだ25ヶ所以上ある。当時から国道4号線沿いを除けば慢性的医師不足にあったが、遂にここまで深刻になったのかと、決して人ごとと思えない。3人の応援医を得たことは大きいと思う。

 これら緊急派遣を受ける病院では医師の退職が相次ぎ、深刻な影響が、道や県が派遣を要請していた、とのことである。ところで、秋田県は申請していなかったのであろうか、と疑問に思う。県の担当者の説明では、厚労省は医師派遣のルールには合致しなかった、との判断で申請しなかったらしい。

 医師は国立病院のほか、日赤などから選ばれ、8月頃までに着任するとのこと。派遣期間は3-6ヶ月間で、2-3週ごとに医師が交代するのだという。
 私は実効性がないだろうと読んでいたが、幸いにも違った結果になりそうである。喜ぶべき誤算であった。ただ、このシステムはやっと始まったばかりで先のことは分からない。全国の医師不足の実情を考えるとまだまだ焼け石に水程度の効果しかないと思うが、緊急的効果はあると思う。このレベルで終わらせないよう条件を整備して、地道に続くように期待している。

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