(1)救急医の第一の任務は患者のグローバルな評価と振り分け
 本年は初期研修制度の発足の特筆すべき年である。当院でも実りある研修制度にするためにいろいろな新しい対応をしてきた。その一つが救急医療支援チームの発足である。このチームは少なくとも私が期待していた以上の活動計画を作り、2週間ほど前から実行に移しはじめた。その一つが8:15amからの救急患者カンファレンスである。観察室でオーバーナイトで経過を見た患者を中心に手短に提示し検討するというもの。
 
 私のような定年間際の医師が救急医療に関して現役の医師達をさしおいて指導出来ることは何もない。枯れ木でも居ないよりは居る方が制度に花を添えるかもしれないし、自分自身のためにもなるだろうから、と考えて先週木曜日から出席してみている。金曜朝などは救急室に入りきれないほどの若手医師、外来看護師等が集まり驚くと共に、救急医療支援チームが当院の救急医療の問題点を良く理解し、良いことを始めてくれたといたく感心した。この時間を是非有効に使って良い体験、良い研修をして欲しい。自分の半生・・なのか終焉の時期に自分を振り返る事になっているのか分からないが、・・・分からないから面白いのだが、をHP上で振り返っている最中で、私が駆け出しの医師になった頃のことに差し掛かっているので、若い医師達をみていると30数年前の自分をみるようで懐かしさがこみ上げる。

 3人の医師のプレゼンテーションを聞いたが、各人の性格が反映され三様で面白い。22:00pmからの徹夜勤務の後のことだし、診療に追われて十分に考える余裕はなかっただろうから細かいことは問題に出来ない。
 ただ、救急時間帯の中で診断・検査・治療を完結させる必要は殆ど無いのだと言うことだけは言っておきたい。必要なのは大きな意味からの患者の分類である。それによって今自分が何をすべきかが自然と明らかになってくる。

 救急担当医として最も大事なのは、来院した患者が現時点で絶対的超緊急状態にあるのか、緊急状態なのか、非緊急状態なのか、救急時間帯の対症療法だけで帰宅させて良いのか、この時間帯に来るべき適応がある患者なのか否か、の判断が重要であり、この判断に検査等は必ずしも必要でない。まず患者をみて大凡の見当をつけることである。更に、近時点で変化しうる可能性がある状態なのかの判断も含まれる。具体的病名などはその後に考えればいい。

 ただ一つ、当院では急患であるか否かの判断は受付の段階でするのではなく、患者本人あるいは家族が自ら急患だと判断して来院すれば急患と見なしてまず診療をし、それから判断すると言うことである。このことの是非は別にしてそうやってきた。いろいろな考えがあるが、私は間違っていないと思っている。患者の状態の連絡からだけで判断して通常時間帯に来るように言ったり、診療を断ったりお説教してはいけない。なんでも、まず診てからと言うこと。

 その際、どう見ても救急時間帯に来院の要のない患者も沢山混じっている。その方々には受診について、医療の受け方について指導をする必要があるが、自分の診療が患者に満足を与えていない、納得されていない、と感じたときは指導はしない方が良い。こんな時にこそ説教したくなる気持ちは誰にでもあるのは理解するが、容認は出来ない。何となれば、この状態での指導はあらぬ誤解を生み、後々大きなトラブルの因になるからである。そんなときは、「後で再来等を受診した際に、救急受診の仕方についても指導下さい」、とメモでもしておけばいい。






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