高田剛志チェロリサイタル



アトリオンにて高田剛志と林真生のデュオコンサートが行われた。
高田氏は1970年、富山市生まれ。1994年からドイツ・ハンブルグ音大チェロ演奏科に留学。同大ピアノ教育科に籍を置いていた林氏と結婚。現在は秋田と富山を拠点に演奏活動を行っていると言う

プログラムは。

「ソナタ第六番 変ロ長調」(ヴィヴァルディ)。
「ピアノソナタ第一番」(ブラームス)。
「無言歌」 (メンデルスゾーン)。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」(ラヴェル)。
「幻想小曲集」(シューマン)。



高田氏は小柄で終始にこやか、明るい性格が感じ取れた。技術的にかなり高度であることは当然として、音色は明るく、フレーズごとの歌い回しは丁寧、随所で共感を覚えた。
曲の間にはトークがあり、彼の話はチェロほど流暢ではなく、親しく語りかけるもので、親しみを持ててなかなかよかった。林氏は美声であった。

ヴィヴァルディのソナタは高田は力まずに、フレーズを一つ一つ丁寧に弾いた。最初の曲としては好調なすべりだしであった。

ブラームスのソナタでは彼の明るめの音色が些か裏目かな?と感じながら聴いていた。ブラームスの生地であり、高田の留学地であるハンブルグには私は二日間だけしか逗留しなかったが、国際的貿易港として豊かな活気に満ちていると言われていたが、地味でやや陰鬱な印象を受けた。天候も関連しているらしい。
 このソナタもまさにハンブルグの街を思わせるような暗い出だしで始まる。時に光が差すような明るいメロディーが覗くのだが、すぐにまた霧が出てきて暗くなるが、私は好きな曲である。
 高田氏もその辺を語っていたが、必ずしも陰と陽の弾き分けが出来ていたとは私には思えなかったが、十分に楽しんだ。チェロのアジャスターが緩んで雑音を発し、高田氏も演奏しながら気にしていたが、これも演奏会ならではの風景である。

休憩を挟んでからは小品集。ハンブルグの霧から一転、明るい曲が中心に組まれており、これらも大いに楽しめた。

アンコールはカザルスの「鳥の歌」ほか三曲だった。「鳥の歌」はカザルスの平和への思いを音楽に託した曲であり、高田はアメリカのテロなど暗いニュースが多いことに心を痛めていて、この曲をアンコールの一曲目に持ってきたという。音楽的にはまったく傷がなく、美しい感傷的なメロディーを音楽的に高い完成度で歌い上げたが、この曲は例え乱れても何か感じられると思う。プラスアルファーが欲しかった。

二曲目のカサド「愛の言葉」 お見事の一言。このチェリストは明るい曲ほど個性を発揮できるように思う。アンコールにするにはもったいないほどで正規のプログラムに入れてもいいのではと思った。

最後はJ・Sバッハ「G線上のアリア」 誰もが知っている曲だが気負っている雰囲気はなく、演奏自体を楽しんでいるようだ。最初の全音符のカンタービレが素晴らしい。こういったアダージョ系の曲はまったく誤魔化しが利かないだけ演奏者の音楽性がもろに出る。

最後に、関係者だと思うが演奏中に撮影をするのはどうかと思う。音のないデジカメにするとか少し考慮していただきたい。ジョンケージの「4分33秒」という曲は聴衆の出す音も音楽の一部に取り入れてたと言うが、そこまででなくとも聴衆の発する咳払いなどの最小限の音は私は気にしない(鼻水は困る)が、シャッター音は迷惑だあった。



高田夫妻 (写真:秋田魁新報社)  

           



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