朝2時起きで、なんでもできる!枝廣 淳子 (著)サンマーク出版 2001
成功の技法―起業家の組織心理学    中公新書
田尾 雅夫 (著)
「小論文の書き方」;文春新書猪瀬 直樹 (著) 2001
 「寝てもさめても猫三昧」主婦と生活社    2002 池田 理代子 (著)



朝2時起きで、なんでもできる!
枝廣 淳子 (著)サンマーク出版 2001
価格:¥1,300
  早朝起床のノウハウから種々のことを書いているのかと期待したが,朝の2時起き・・は題名だけであった。2時起きのメリットも若干は書いているがその生活パターンの優位性を強調し読者に強く勧めているわけでもない,焦点のぼけた内容である。

 ただこの著者の見るべき点は,何か常に目標を目前に掲げて生きている積極的なヒトだと言うことはよくわかる。これは感心するし共感した。たとえば,思いがけず生じた米国居住の機会を,良いチャンスだからこの間徹底して英語の学習に充てるぞ・・と目標を持って渡米,第2子妊娠中の身体にもかかわらず,その目的のために家に閉じこもることなく地域にとけ込むなど,・・・根っからの努力家のようであり,そう簡単にはめげない明るい性格だ。

 結局,著者は2時起きで頑張った結果,独立した時間が確保出来,有効に生かすことで大きな事業を成し遂げたわけであるが,こんなことは誰にでも出来ることではない。自分のやりたいような生活が出来ると言うことはそれなりの環境が備わっていることが大前提。一見まともでないパターンの生活を送っているヒトは実際には周囲に多大な影響を与えている,と言うこと。著者の家庭ではご亭主,二人の娘たち,実母までが著者中心の生活に翻弄されながら,それなりに耐えてけなげに生きているということで,その様子も明るく述べられる。その辺が若干面白かったかな。

 一人の女の生き方が述べられているだけで,あまり役にも立たない。到底お薦めの本とは言えないが,私と若干の共通点があるから読めたようなもの。表紙の絵はなんだか意味深である。何なんだこの図柄は??


成功の技法―起業家の組織心理学    中公新書
田尾 雅夫 (著)
価格:¥760
 最近は不況のあおりを受けて企業の経営は至難の状況にあり、リストラ、倒産のニュースが次々と入ってくる。卑近な例では景気停滞が続く中、新型肺炎の感染拡大による観光客減が新たな追い打ちをかけ、観光業を中心に、世界の観光・旅行業で約517万人が失業すると推計している。これのあおりはわが国にも及ぶであろう。

 この時代、起業マインドは重要ではあるが、アイデアをまとめ、立ち上げ、業績を維持することは至難の技で、失敗も多い。
 ところが起業が盛んな業界がある。これは医療界、とは言っても病院は総病床規制のために新規には開設は出来ないが、診療所は規制が無い。そのためにいま開業ラッシュである。診療所の開設も立派な起業ではあるが、他の業種とは全く異なり、人がその周辺に居住している限り一定の需要があり、安売り競争もない。だから一般業界の起業とは比較にならない。とは言え、
起業家である以上、性格などの属性、カリスマ性、環境、運など、幅広い要素が必要ではある。

 本書はそのような企業家の要素について分析した本であり、空港の書店で偶然手にした。私は、診療所経営に乗り出すつもりは100%無いのだが、企業家意識については興味を感じていたので購入した。
 内容的には上記の企業家に求められる特質について、企業に成功した人、失敗した人の要因を蒐集、分析し紹介しているが、それぞれの項目に目新しさがあるとは言えない。著者は、先天的な性格、外生的な環境を重視している。その論法、内容は興味深いし、恐らく著者の分析は正しいのだろうが、そんなに要件が揃った人間などいるはずがないと思う。条件が揃っていないときにどうすべきかという提言はほとんど無いから、指導書、実用書にはならない。

 言えるのは、これらの要件を診療所を開設しようとする私が知っている医師達に当てはめてみた場合には、これらの要件が揃っていない人達の方が多い。要するに診療所経営には起業マインドなど必要もない世界なのだ、と感じ入った。
 むしろ、起業マインドは勤務医に欲しい要件である。



猪瀬 直樹 (著) 「小論文の書き方」;文春新書 2001
 
最近小文を書くことが多いが、その度に呻吟し、いつまでも上手くならないと思っている.数日前名古屋への途中、「小論文の書き方」を見かけ、少しでも役に立てば、と思い購入した.
 驚いたことに題名とは異なり、書き方 を具体的に教えるのではなく、自分の著作を読ませることによって、ポイントの置き方、強調点などを自然に修得させるように仕組んだ本であった.筆者の問題をとらえる視点は鋭い、それでいながら独善的ではないので学ぶところは大きい.また、内容は時事問題の回顧にも有用で、フーン、こんなこともあったのか・・・と関心することも多い.しばらくは手放せそうもない本である.
(2002/3/30)



池田 理代子 (著) 「寝てもさめても猫三昧」主婦と生活社    2002
  
これは実にバカらしい猫キチ○イの筆者による猫エッセイ集。寝る間もなく一気に読めた。私は猫がさほど好きではないが、過去に猫に世話になった身であり恩義を感じているから猫に無関心ではない。でも、あまり猫に関したエッセイ等は読まない。内容が自己満足的になりがちで耐え難いからである。この本はたまたまいきつけの書店のレジ脇に積み上げていたのを発作的に購入した。そして、常軌を逸した自己満足ぶりに恥ずかしながら引き込まれてしまった。

 著者は「ベルサイユの薔薇」の作者。47歳で東京音楽大学声楽科に入学、劇作家、作家、ソプラノ歌手としても活躍している。だから、あの「ベル薔薇」雰囲気の猫エッセイが面々と続く。「ああ、愛しの、愛しのお猫さま・・・」調である。文中にお猫さまのお写真がふんだんに盛り込まれているのもいい。(表紙のお猫さまはごんちちゃんというご尊名らしい。)

 以下は一部。全編この調子で貫かれているから逆に痛快でもある。

 『この世であなた様方ほど、私の心を捕らえ和ませ幸福を与えてくれる存在があるでしょうか。 私は、もう随喜の涙を流しつつお食事のお世話をさせていただき、お手洗いのお世話をさせていただき、お風呂にもお入れし、毛を梳かせていただき、噛みつかれようが引っ掻かれようが寛大な心をもってお許し申し上げ、その挙げ句に全然顧みられなくてもそれはそれで仕方ないとつれない仕打ちに甘んじ、たまに一声でも掛けて頂こうものなら身をくねらせて歓喜し、さらに膝にでも乗って来られようものなら仕事のすべて放擲して幸福に酔い痴れてしまうので御座います。締め切りも編集者も、あなたさまの前にはものの数でもございません。 』

 もうここまで来れば私は何も申せません。ただ、著者に脱帽するのみで御座います。・・・作者の口調が私にうつってしまったよ。茶の間に置いていたら家族や客人も手にとって読んでいたね。
 猫キチのヒトに、のみならず人生の目標を失って生き方を迷っているヒトは必読である