在院日数短縮に向けて
                                

入院総合診療部長 福田光之

 2002年3月28日の臨時医局会で在院日数短縮に向けての入院総合診療部長の立場から意見を求められた.思いつくまま述べたので散漫であったと思われる.以下に概要を記します.
はじめに

 入院診療部の考えを求められたが、次長の手伝いはあるものの私一人の部署で系統的機能を果たる組織ではない.しかし、立場上、今回のような問題の解決には中心になって責任を果たさなければないだろう.

 入院診療については日頃から情報を収集し、それなりに考えてきた積もりである.個人的な意見の範囲であるが、当院における対応等についてお答えしたい.

在院日数大幅短縮の背景

 厚労省は在院日数25日の縛りを一気に20日に短縮した.25日を採用している病院の90%近くが要件をクリアしているから、とのことらしい.

   更に奥深い背景としては、医療費削減のための一般病床の削減がある.急性期患者の発生数は今後も変わることはなく、むしろ高齢化社会を背景に増大すると考えられているが、在院日数を減少させれば、空床が生じるために十分にやっていけることになる.厚労省にとっては一石二鳥の政策である.

 医師や看護婦のスタッフが欧米諸国の約半数しか居ない日本で、かつ福祉ベットが数分の一しかない日本で、社会資源やスタッフ増加の手だてを全くしないまま、経済的締め付けによって、半ば暴力的に欧米並みの在院日数に近づけていくと言うことは、経済効率のみを優先した病院いじめ、患者いじめに過ぎない.

 今回の在院日数短縮では大きく見て三つの問題点が生じてくる.
すなわち、
●従業員の労務増大、
●医療事故発生の危険増大、
●患者が路頭に迷う、
ことである.


当院でどうすべきか

 上記の問題点はあるが、いたずらに批判しているだけでは何も生まれてこない.

 当院はこの難問をクリアせずして存続は出来ないので入院診療の質を維持しながら以下の点について検討が必要である.

●在院日数短縮には考えられる全てのことを実践する、
●従業員の労務増大をいかにして防ぐか、特に医師体制は重要
●医療事故発生の危険増大にどう対処するか、
●患者が路頭に迷うことをさせないよう如何にすべきか

方策は
短期入院患者の確保
●各診療科毎に短期入院患者の一定数の確保が必要である.各診療科の検討をお願いしたい.

●代謝科の教育入院、循環器科の冠動脈造影、消化器科の内視鏡的ポリープ切除などは在院日数短縮に寄与している.

中期的入院患者について
●入院治療、検査が必要なもの以外は外来で修了させておく.
●クリニカルパス導入
●早期退院についての説明、内容、方法等の充実
●手術待ち期間は一端退院、自宅待機とする.

●外来化学療法、照射療法、中等度疾患の経過観察は可能な限り外来で行う.その際、機能的な予約外来のシステムが必要.当院の多くの予約制度は患者のためにはなっていない.

長期入院患者について
●入院時、早期退院の説明を行う
●施設入所者の急変時の入院依頼についてはトレード入院を求める.
●施設入所者の急変時の入院依頼についてはまず後方病院へ受診してもらう.
●早期リハビリの実施
●クリニカルパス導入
●病診連携をフルに活用して早期退院を図る

医療ケースワーカー有効活用
医師会活動の有効利用
卯月の会の活用ーーー継続的維持活動を欠いたのは問題.短報とかの発行など. 関連施設の有効利用ーーー現状ではさっぱり役立っていない.

病棟の機能別運用
 
●急性期病棟、亜急性期病棟、慢性期病棟を機能的に分けて運営する.
スタッフの傾斜配分を行うことによって医療事故への対応、過剰業務の状態への対応も
急性期病棟では疾患の改善に向け集中する.
亜急性期病棟、慢性期病棟では特異的医療の意義は減少する.早期退院を念頭に置いた采配を主に行う.

今後の方針

 ●全国レベルで方策の情報を収集する.
 ●近隣の大病院、特に秋田市内4大病院の対策の情報を収集する.長期化する患者の入院適応などについて各病院と大きな違いがあると、場合によっては長期化が予想される患者が当院に集中する可能性がある.

 ●在院日数短縮のためのプロジェクトを組む.機能するためには事務系職員の働きが重要.


その他
 従来各診療科の診療内容には言及することは少なかったし、あっても「それは無理」の一言で片づけられたことも少なくない.どうすれば実現出来るか、と言う方向性を持った取り組みの姿勢が欲しい.

(2002/3/30名古屋にて記述)