大曲中通病院「友の会だより」

 小泉さん、これじゃ「一得二方損」 !! 約束が違う !!

                                       秋田中通総合病院  福田光之

 小泉首相は行政改革に「米百俵」を初めとしたキャッチフレーズをつけて提起しています。確かにキャッチフレーズをつけると全体のイメージが解りやすくなり、良い印象を与えます。医療制度改革のキャッチフレーズは「三方一両損」でした。

 「三方一両損」は時代を江戸時代に設定した作り話で、三両なくした人,拾った人が互いに意地を張って受け取らず、仲裁に入った大岡越前の守が「自分も1両を出すから,2両ずつ分けよ」という話です.要するに3人とも1両ずつ損をしたということです。私は個人的には丸く収めるこんな解決法を好みませんが,これを医療制度改革に見立てて、国民、医療機関、国が、相応の負担をして危機を乗り切ろう,と言うものでした.

 私は医師として医療環境をこれ以上悪くしないために言いたいこと,要求したいことは沢山あるのですが、時節がら止むを得まいと、一部は納得していましたが、提示された改革案は「三方一両損」と言えるものではありません.
 詳細は省きますが,今年の4月から●老人の窓口負担を引き上げる●6ヶ月以上の入院は15%を自己負担に●医療機関への診療報酬2.7%値下げ.今年10月から●70歳以上の窓口1割負担にする.来年4月から●健康保険料を引き上げる●サラリーマンの窓口負担3割にする,などです.

 要するに国民の保険料,窓口負担を増額し、保険点数を下げて医療機関の収益を大幅に減らす,というもので、国の応分の負担はないのです。

 首相や政府は、医療費が国の財政を圧迫しており,少子高齢化で将来さらに状況が悪くなる,と言っています.確かに年間30兆円は大きな額ですが,国民総生産の中に占める医療費の割合を外国と比べてみますと,先進国の中で18番目と低いのです.それでいながら平均寿命や健康寿命が世界一な訳ですから、少ない医療費で最大の効果を上げていることになります。だから,はっきり言えば,医療関係者の労働環境は大変なのです。私は,いつかはもう少し余裕を持って診療出来る日が来るだろうと期待していたのですが,はかない夢に終わりそうです.

 先進国と言われる各国では医療費や福祉の費用を捻出するためにかなりの努力を強いられています.日本の政治家は,この点で楽なはずですし,目立った民族紛争もなく,隣国との小競り合いもなく,楽に国を治めていることになります。だから,国会で金銭がらみのくだらない論争を繰り広げている余裕があるのでしょう.

 今後のことですが,私は患者さんの健康を預かっているという責任と自覚がありますから,医療環境を良くするために医師会を通じて積極的に政府に働きかけをしていきます。友の会のみなさん方は,政府の言うなりにならず,将来どういう医療を受けたいのかを自分で考え,発言し,選挙とかを通じてしっかりと意思表示して欲しいと思います。




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                                               (2002/5/1)