研修医諸君へ(7)常に川の上流に別な犯人が居るかも知れない、と考えること 
 特に高齢者の場合など、往々にして症状発現が非典型的である。明らかに上気道感染や尿路感染症の症状を持ってきた場合、多くはそれで合致するであろうが少しでも非定型的症状を持っている状態、何か雰囲気がおかしい??と思ったらそれ以外の可能性も考える必要がある。

 例えて言えば、川下の住民に川の水に由来すると思われる何らかの中毒反応が出て、上流で一人の犯人が捕まった場合に、それで一件落着と考えてはいけない。少ない可能性ではあるが、更に上流にもう一人犯人がいて、こちらの方が遙かに重要な犯人であったという場合が決して少なくない事を念頭に置こう。

 特に高齢者の場合、どんな場合でも一応、循環器系、呼吸器系、脳神経系は大丈夫なのか?何か隠れていないか・・と一応は疑って自分の考察として除外しておく必要がある。

 それに加えて重要なのは医原性疾患の可能性。何らかの医療を受けている患者の場合、疾患が新たに生じた可能性と同じ程度に薬物性の病態をを念頭に置くべきである。この場合に必須なのは病歴の聴取であるが、他の医療機関への通院状況、服薬状況などについては家族からの情報も重要。

 若い患者の腹痛、不明の病態は妊娠、STDの可能性である。私どものは若い女を見たらまず妊娠と思え・・と教わったものである。この言葉に私自身も随分助けられた。12歳の女児の腹腔内妊娠の診断をしたこともある。それなりの雰囲気を持っている患者の場合はピント来るものはあるが、往々にして雰囲気にだまされることもある。時代柄この言葉の持つ意義は更に大きくなってきていると思う。特に最近のクラミディア感染症を中心としたSTDは要注意。
肝周囲腹炎や胆嚢炎に似た症状を示すフィッツ・ヒュー・カーティス症候群と言うのもある。

次回は  医師同士が親しくなるだけで患者は幸せになる。

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