医療機関の冬=国民医療の冬
われわれの病院をどう変えていく??



 2003年8月には病院の性格付けを決めて申請しなければならなくなっている.今までのように大小様々な医療機関が、そこに受診してくる患者を自由に,勝手に診療していればいい,と言うわけでなくなる.要するに慢性期の病気を中心に診るか,急性期の患者を中心に診る病院か,を意思表示しなければならなくなる.
 1970年代以降,診断・治療を中心に肥大化の一途をたどった日本の医療は、今経済的に国民の求めに耐えきれなくなった。そのための医療政策の方向転換であるが,実際に地域医療を預かっている我々医師にとってはあまりにも拙速すぎる変化である.

 日本が十分に,余裕を持って医療を,福祉を検討出来た時期は過去に明確に存在した.将来の少子高齢化社会の到来は数10年も前から予想されていたので,まだ諸外国よりも高齢化率が低かった昭和60年代から平成初期頃がそれに相当する.先進諸外国が自国の高齢化のために種々投資をして充足を図っていた時期に,その弱みに乗じて日本は方々で稼ぎまくっていたのだ。当時から現在の苦しい状況は十分に予測されていたにもかかわらず,時の政府は選挙の票集めのために国民を目先の餌で釣り,何ら手を打って来なかったのだ.要するに政府は国民を騙し続けていたのだ.
 今,小泉首相はそのときの負の遺産を強力に調整しているのだ・・・と私は理解している.
 「小泉首相は何も実績を上げていないではない!!!」、と言われているがそんなことはない。医療改革だけは確実に進めている。内容的には改革でなく改悪と言わざるを得ないけれども。

 それにしてもやはり拙速すぎるのと,中小規模病院の切り捨ての方向性だけが目立つ.
  今の改革のもう一つの問題点は,前向きの評価や保護の光を大規模病院中心に当てるやり方,と言うことである.経営基盤のより弱い私的病院にとってはやりたい医療の追求をそっちのけに経営を主眼として医療の内容を決めなくてはならないなど,重大な岐路に立たされている.我が国の医療は,自由な発想で医療を展開し,少ない余裕の中から自己投資をして展開して来たことでどれだけの恩恵を受けたのか,正しく評価して欲しいものだ.特に秋田において我々の法人が果たしてきた業績は評価してし過ぎることはない.近隣の病院がやっと近付いてきて横並びになったに過ぎないのだ.

 秋田県には大学付属病院1、県立病院3、自治体立病院12、公的病院扱いの厚生連9病院がある。このうち県立病院は秋田市周辺に集中しているが、他に秋田市には大規模病院として秋田赤十字病院、中通総合病院がある。各地域の自治体病院は市立秋田総合病院,大館市立総合病院は別格であるが自治体の規模に応じ一般に小規模であり、県内各地の中核的病院機能は厚生連病院が担っている。
 
 秋田厚生連では6病院の改築計画を進めていたが今見直しが迫られている。要するに患者の減少によって医療機関の経営状況が軒並みに悪化したためである。小泉内閣が強力に押し進めてきた医療制度改革の影響がじわじわと出始めている。2003年度からは患者の窓口負担が大幅に増加するために受診抑制は更に生じる事を考慮すれば、今、医療機関は季節に例えれば晩秋にあり間もなく厳冬が来る。しかも二度と春を迎えられずに、このまま氷河期になる可能性が大きい。

 地域の中核病院の位置にある厚生連病院ですら経営状況は良くない。ましてや各地で頑張っている私的病院の置かれている立場はより深刻である。秋田市の場合、人口30万の小都市に大学病院を除いても400床以上の大病院が4病院集中しており、事態は深刻である。
 なかでも我々の特定医療法人中通総合病院の置かれている立場は厳しい。秋田市周辺の医療が未成熟であった時期までは、私的病院の優位性を生かし、一次医療から先進的医療まで総合的に展開し市民の支持を得てきたが、振り返ればそれだけ物理的空間に余裕は乏しく、抱える職員数も多く、付属施設も多くなっていった。
 時代と共に秋田周辺の医療レベルがほぼ横並びとなり、更に医療の冬を迎えた今、過去の光り輝いた路線は光を失いつつあるばかりか、むしろ大きな負担になりつつある。医療機関は総じて厳しい時代に向かっているが、中通総合病院はその歴史のなかで最も深刻なな岐路に立ったと言える。
 我々は今、私的医療機関の優位性を今一度発揮して冬に向かって準備を開始しなければならない。ただし,決して冬ごもりの考え方になってはならない。
(徒然日記2002/10/8-9より)

 

これからの医療の在り方