民医連新聞1996年10月掲載

腔鏡下胆嚢摘出術と外来のいろんな患者さんについて


最近腹腔鏡下胆嚢摘出術について術者の立場からの話題提供があったが、この治療法を受けた患者と家族の立場から一言。頻発する胆石発作に悩んでいた家内が1996年8月9日午後、腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた。咳が腹にひびいて辛そうであったが翌翌日には退院。18日には日曜毎に恒例化している知人夫妻とのテニスもハンディを感じない程度に楽しめた。19日から通常勤務に復帰したが、腹腔鏡下胆嚢摘出術の経過には驚いた。本人は子供達宛に遺言と、植物状態になった場合のリビングウイルも用意して臨んだと言うが、この機会を得て家内は患者の不安が解る消化器医に一歩近づけたのでは、と期待している。

 さて、当院は受診し易い病院として知られているが、いろいろな患者さんがいる。医療は人間関係が大事だが、良い患者・医師関係を保つのは易しくはない。私が担当する外来だけしか受診しない患者さん、他の医師に固定している患者さんも居るが、私はこのような患者さんは苦手である。当院にはいろいろな得意分野を持った医師がいるので、時には別の医師に診て貰うよう勧めている。患者さんにとっても私にとても得るところが大きいからである。
 通院も長くなってくると患者さんによっては徐々に我侭になる。逆に、どうしても馴染めない患者さんもいるが、これらの場合には、私の担当する外来には受診しないように指導している。
 種々の愁訴を訴えて救急外来を高頻度に受診するある初老の男性患者さんがいる。この患者さんは私の担当する外来にも頻回に受診していたが、それほど我侭な診療態度ではないと思っていた。しかし、時間外に診ることの多い若手医師の数人から、この患者さんが私の名前を出して具合が悪いときにはこうして貰うよう言われている・・などと言って処方や処置、経過観察用のベットまでも要求しているのを聞いたので、ある日私には一切受診しないようにと厳しく指導した。その後、小生には一度も受診せず、救急室で私の名前を使うこともなくなった。1年以上約束を守ったのでまた診てほしいとの申し出があり、この患者さんは先日から再び私の担当する外来にも受診しているが、より節度ある受診態度になっている。受診を断ったことが治療上でも一つの目的を達し得たと思っている事例である。
これからの医療の在り方